【出会い系体験談】クリスマスイブ当日に見栄っ張りなヤリマンと即アポ即ハメした件(前編)

昨年のクリスマスイブ。厳密に言うと、もうとっくに日が変わった深夜のことだ。
俺は都内にある24時間営業の喫茶店で、一人の女と向かいあっていた。
彼女とのデートというわけではない。数時間前、出会い系で見つけて即アポした女だった。

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こういう言い方をすると、どの道その後は即ハメしたんだろ、問題ないじゃないかと思われるだろう。
実際、結果としてはそうなったのだけれど、その時の俺は女の反応に辟易していた。
元を正せば、博打だとわかっていながら誘った俺が悪いのだけれど。
俺は、女のじりじりした顔を見ながら、さきほどの出会い系でのやり取りを思い出し、自分の判断を後悔していた。

最初に見つけたのは、夜8時くらいだった。
「彼氏とデートするんですけど、まだちょっと時間があって。それまでの間、どうですか?」
女からのメッセージに、俺は引いた。
俺が言えたことじゃないが、よりによって彼氏と会う前に他の男とデートしようというのだ。
たとえ暇つぶしでも、彼氏とやらにバレたら冷めることは間違いないだろう。
言っていることが本当なら、どれだけ尻軽なんだこいつという話だ。
だから、最初は誘う気なんてなかったし、適当な返事だけ返して忘れていた。

けれど、夜10時を回ったあたりで、俺の方も話が変わってきた。
そもそもクリスマスイブに出会い系なんかに興じていたのは、それなりに俺も飢えていたからだ。
その頃俺はとことん女がらみの運がなく、ずっとご無沙汰だった。

そんな中でクリスマスイブが近づいてきたのだ。周囲のまともなカップルたちの雰囲気に当てられた俺は、柄にもなく彼らを羨んだ。
固定の女を作ろうとしてこなかった俺の自業自得ではあったが、そんな中で迎えたイブ当日は最悪だった。性欲も、ここ数ヶ月感じたことがないほどに高まっている。
自分で一発抜いてもよかったのだけれど、せっかくのイベントだ。どうせなら本物の女とやりたかった。
とはいえ、久しく女運に恵まれていない俺だ。出会い系でもなかなか相手はみつからなかった。
時間が遅くなるにつれ、俺は半ばあきらめていた。
もう時間が時間だ。俺は車を持っていないから、電車が危うくなってくるとそもそも会える範囲が限られてくる。

そんな時に、先ほどの女が思い出したようにまたメッセージを送ってきたのだ。

「彼氏まだ時間かかるって。暇ですー。」

ホントかよ。
イブのデートでこの時間まで待たせるって、あり得るのか?
そこまで考えて、俺はふと思った。もしかして、こいつ格好つけてるだけで、実は男なんていないんじゃないのか?
自分に都合の良すぎる想像に過ぎなかったが、その時の俺は焦りで判断力が低下していた。一度そう思ったら、どうしてもそちらの方が正解なように感じてしまう。
それに、サクラやキャッシュバッカ―とはなんとなく雰囲気も違う気がした。それだけでも、価値は3割増しに見えた。

どうせもう駄目元なのだ。賭けてみるだけの価値はあるか。俺は女に返事を返した。
「今、どこ?」
この女に関してはこの辺りのエリアにいるとだけは大まかに聞いていたから、少なくとも会うことまではできる。この際、贅沢は言っていられない。
俺はそう思ったのだ。
もっとも、今思うと我ながらよくもまああんな賭けに出たものだと思う。
女の言っていることが万が一本当だったら、女の頭のゆるさ次第では彼氏と鉢合わせしかねない。
そうなったら、修羅場は必至だ。
けれど、その時の俺の頭からは、そんな最低限の危機管理意識さえすっぽりと抜け落ちていた。

指定された喫茶店は、出会い系の待ち合わせではご用達の、24時間営業の店だった。
そこで彼氏からの連絡を待っているからということだった。
出会い系を使い慣れているのはある程度それでわかったが、俺としてはいよいよどんな女かと思った。
ただ、場所としては好都合だ。
何しろ、俺の家からなら徒歩でもギリギリ行ける距離なのだから。ある程度近いとわかっていたとはいえ、ここまで近くにいるとは思わなかった。

喫茶店に入って、それらしい女を探すとすぐに見つかった。
というか、店内に女はそいつ一人だけしかいなかったから、迷いようもなかった。

「こんばんは」
「あ、こんばんわー。はじめまして」

真正面に座ったが、初対面の印象からしてこれは、と思った。
どんなネジの外れた女が出てくるかと思っていたが、顔は悪くない。むしろ、顔だけを見れば出来すぎなくらいだ。
好みの差はある程度あるにせよ、この女をみてかわいいと言わない男はそうそういないだろう。
いかにも軽そうな雰囲気ではあったけれど、その分茶目っ気はあって親しみを感じさせる。
服の上からだが、スタイルもなかなかだ。

ただ、問題は、顔や体のつくりではなかった。
目が泣きはらしたように充血している。化粧も台無しだ。
そのくせ、クリスマスイブのデート以外には使いようがないだろうデザインの服を着ているのだからやりきれない。
赤と黒と白を巧みに使い分けた、いかにもこの日にはピッタリのワンピース。
それだけならいいのだけれど、服全体に、まるでプレゼントの箱の包装のようにリボンが施されている。
見た瞬間に「プレゼントはわ・た・し」というありがちな言葉が真っ先に頭に浮かんだ。多分、殆どの男は同じ連想をすると思う。

一目で、俺は悟った。すっぽかされたか、別れたか。表情からすると、どちらかというと、後者の可能性の方が大きいだろう。
多分、本人も薄々それがわかっているはずだ。そうでないなら、あんな顔をしているわけがない。
それなら、誘い方次第では十分見込みはある。俺は心の中で、秘かにガッツポーズをした。
ただ、本人が彼氏待ちだと言い張っている以上、まずは話を合わせるしかない。

「彼氏、まだ連絡なくて」
「うん…なかなか仕事終わらないみたいで」
「で、俺で暇つぶししようと」
「うん。賢いでしょ?」

俺もそれなりの経験はある。声の雰囲気だけでデタラメだとわかった。
想像通り、格好つけというか、かなりの見得っぱりぶりだった。
もっとも、本人にとっては体面だけの問題ではなかっただろう。
現実を認めたくないであろう彼女にとっては、虚勢とはいえ心を保つ意味あいもあったと思う。

「ふうん。で、どうする?連絡あるまで」
「ちょっと、おしゃべりに付き合って欲しいな」
「いいよ」

喋っていれば、そのうち嫌でもめっきははがれるだろう。俺はそう思った。

そのまま日が変わってしばらくたったわけだが。

「…彼氏、まだ連絡ないの?」
「うん…でも、もうちょっとだけ…」

女は往生際悪く、いつまでも来ない彼氏を待ち続けている。
よほど執着していたのか、本人ももう涙声になっているから見るに堪えない。
そんな調子だったから、会話さえ弾まなかった。この雰囲気では、とてもじゃないが本題を切り出すことはできない。
俺は退屈なのと気まずいので、やってられなかった。
壁にかかった時計の針が、みるみる進んでいく。もう、とっくに終電は終わっていた。

「あのさ、いっつも出会い系、使ってんの?」

暇を持て余して、俺は切り出した。
我ながら、口調はかなりぞんざいになっていた。

「ぐすっ…うん…、そうだよ」

泣きはらした顔を上げた女だったが、いきなり違う話を振られて気が逸れたのかもしれない。
しゃくりあげながらも、不思議そうな顔をして肯定した。
まるでそれが当たり前かのように、こともなげに。

「今日みたいな暇つぶしって感じで?」
「それが多いかなあ。でも、それ以外にもいろいろあるし」
「それ以外って?」
「エッチとか」

女の口から飛び出してきた言葉に、俺は言葉を失った。
あまりの軽さと、目の前の泣きはらした彼女のギャップに目まいがしたのだ。
それでも、こちらから振った話な以上、返事を返さないわけにはいかない。
俺は、無理矢理言葉をひねり出した。
もっとも、俺の目的には好都合な展開だということは、考えにさえ上らなかった。
あっけに取られて、頭が働かなかったのだ。

「ふうん。でもなんで?彼氏、いるんだろ」
「彼氏と他の人は別だよ。愛してるのは彼氏だけだもん」

おそらくだが、それが彼氏とやらが見切りをつけた原因なんじゃないか。
女のカンというが、男だってぼんやりしている奴ばかりじゃない。
だが、女は心の底からそれが自然なことだと信じているようだった。
本気で頭がどうかしてる。俺はそう思った。

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