最近小学校や中学ではモンペアが問題になってるけど、それは保育園もおんなじだ。
あたしの保育園にも、気が狂ってるんじゃないかと疑いたくなるような親が何人もいる。
そういう人がさほど珍しくもないんだから、つくづく終わってると思う。
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あたしがあんなことになったのも、元を正せばそんなモンペアが原因だった。
その奥さんは、保護者の中でも飛び抜けて厄介で、場所を選ばす激高する。しかも彼女の血縁者にはこの辺り一帯の名士も何人かいたから、ますます始末に負えない。
あたしに限らず、園の従業員一同、全員が彼女の扱いには困り果てていた。
ただ、保育園の中にも序列というものがある。
あたしがツイてなかったのは、その序列の最下位にいたことだ。後輩がいなくて保母の中でも一番の若手だったあたしは、厄介事を片っ端から押し付けられていたのだけれど、そのなかにはモンペアへの対応業務もしっかり含まれていた。
そして、その奥さんの対応は、その最たるものだったのだ。
よく怒鳴られるのにも慣れるというけれど、彼女に限ってはそれはなかった。
怒鳴り方の激しさが常軌を逸しているのはもちろん、抑揚の付け方や相手の追い詰め方、そのすべてが悪い意味でうま過ぎたのだ。心をえぐりとる才能というのは、ああいうものなんだろう。
割と図太い方だと自負していたにもかかわらず、精神を徹底的にガリガリと削られていくような罵倒を連日浴びているうちに、あたしは徐々に平静さを失っていった。
彼女の旦那さんが、甘い言葉で近づいてきたのは、それが行きつくところまで行きついた頃のことだった。
―――俺がなんとか妻を取りなしてやる。その代わり、やらせろよ。
冷静に考えると、ふざけるなと言うしかない提案だ。
けれど、あたしにはもうそんな判断力は残っていなかった。
滞りなく、旦那さんとのセックスは済んだ。そして、どう言い包めたのかしらないけれど、奥さんの罵詈雑言も完全ではないものの、だいぶマシにはなったのだ。
園長や同僚はみんなホッとした顔をしていたし、あたしも後悔はしていなかった。
身体を売った事さえどうでもよくなるほど、それまでがひどすぎたのだから。
ただ、同僚たちはともかく、あたしにとって話はここで終わらなかった。
旦那さんの要求は、一度だけでは終わらなかったのだ。
あたしは応じた。
断ったら元の木阿見になるのは目に見えている。完全にこの悪循環を断つなら園を辞めるしかないけれど、当時、この辺りの求人状況は最悪だった。保育以外にロクなスキルも資格もないあたしは、どうしようもなかった。
園長たちは、あたしに降り掛かってきた災難に薄々気づいているようだった。それでも、何も手を打ってくれる気配はなかった。
あたしひとりが人身御供になってそれで済むというのなら、彼らにとっては安いものだったのだろう。
教育者が聞いて呆れるけれど、あたしだって彼らの立場だったら同じだったと思う。
結局、あたしは旦那さんの愛人みたいな立場になってしまった。
愛人とは言っても、お手当てはなし。敢えて言うなら、奥さんを黙らせてくれるのがお手当てのようなものだ。
それはそれで構わなかった。報酬としてはそれだけでも十分だったからだ。
とはいえ、あたしは怖くてしかたがなかった。こんなことを旦那がしていることが万が一奥さんにバレたら、どういうことになるか。
けれど、旦那さんはまったく意に介する様子もなく、連日あたしをホテルに誘っては犯し続けた。
普通に考えたら、あたし自身はもちろん旦那さんだってただで済むとは思えなかったのに。
でも、多分そのあたりはあたしが気にしても仕方がない事情があるんだろう。
夫婦のことなんて、他人であるあたしにわかるわけもない。
それに、そんなことを気にしている場合ではなかった。
旦那さんは旦那さんで、ある面ではあの奥さんよりもタチが悪かったのだ。
しばらくの間はごく普通にセックスしているだけだった。
もちろんあたしは旦那さんは内心大嫌いだったし、あくまで身体を貸しているだけと自分に言い聞かせて何とか納得していた。
それでもちゃんと濡れてはくるのだから、公平にみて、旦那さんはセックスの腕はかなり上手と言ってよかった。
挿入されてからもあたしは萎えた気分の割にはちゃんと感じていたし、さほど大きいわけでもないち●ちんも、なぜかしつこいくらいにあたしの一番気持ちいいところを突いてくる。
あたしとの身体の相性そのものは悪くなかったようだ。
だから、そのあたりまでは、ただ屈辱を感じる程度で済んでいた。
けれど、旦那さんは徐々に本性を現してきた。
お尻に細いとはいえバイブを突っ込んできたあたりが、その境目だったように思う。
それからは、あたしにとっては辛いプレイが立て続けにはじまった。
SMまではいかなかったけれど、どれもこれも自分の記憶を消したくなるようなものばかりだった。
やったことの内容からすると、彼は元々、人を辱めることに快感を感じるたちだったんだと思う。
セックスのあと下着を取り上げられてノーパンで帰れと言われる程度は日常茶飯事で、一度などは中出しされたままパンストまで取り上げられた状態で帰宅したこともあった。
もちろん避妊対策は万全だったけれど、そういう問題ではなかった。
あたしのアソコからは、ダラダラと旦那さんの精液が流れ出てくる。
冬だった上に夜だったのが幸いして、足早に歩くあたしのコートの下の惨状に気づく人はそんなにいなかった。
けれど、それでも何人かの見知らぬ人が、あたしの足を伝って垂れ落ちている白いものに気づいて、唖然とした顔をしているのがわかった。
あたしの家のあたりに人通りがなかったのが、せめてもの救いだった。ご近所さんに知られたら、どうなるかは考えるのも怖い。
次に彼に会ったとき、あれ、無事だったの?と残念そうな口調で言われたときは、めらめらと殺意が湧いた。
それでも、わたしは旦那さんに逆らうことができなかった。
あの奥さんの鬼のような顔を思い出すと、身体が震えた。
あの罵声を浴びる毎日に戻るくらいなら、まだこの方がマシだった。
彼も、それはわかっていたんだろう。セックスの回数こそ以前より減ってきたけれど、それに反比例するように旦那さんの要求はどんどんエスカレートしていった。
その日はまだ桜の咲くまでには間がある、3月の肌寒い日だった。
風は冷たかったけれど天気はよくて、明るい太陽がさんさんと照っている。
春の訪れをなんとなく感じられる、そんな穏やかな昼下がり。街の光景も、平和そのものだった。
そんな中で、あたしは繁華街近くの並木道にひとり立っていた。
この辺りには飲食店もオフィスも多いから、人通りはそこそこに多い。
もちろん、怪しげなことができる余地なんてない。本来なら。
旦那さんがどこで見ているのかはわからない。そもそも見ているのかさえ知らされていない。
とはいっても、彼は間違いなくどこかから、あたしの様子を監視しているはずだった。
そうでなければ、わざわざあたしにあんな指示をだした意味がないんだから。
今日は別に、下着を取り上げられているわけでもない。
パンストだってちゃんと履いていたし、スカートだって心持ち短いという程度だ。
見た目でヘンな所があるとすれば、寒さの割にはコートを着ていないという点だけだった。
短めの、腰程度までしかない上着を一枚羽織っているだけのあたしは、周囲から見れば我慢大会でもしているように見えたかもしれない。
もしそう思われたのだとしたら、それは大筋では間違っていなかった。
あたしは、これからの3時間を思って、気が遠くなる思いだった。
彼からの指示はシンプルだった。
―――この辺りを3時間、延々歩き回るんだ。ただし、トイレには一回も入ったらダメだからな。
早くも寒さで自分の膀胱が縮みあがるのを感じながら、あたしは絶望的な思いだった。
平和な街の風景が、すっかり色あせて見えた。
スマホが鳴った。着信元さえ見ずに、電話に出る。
もううんざりするほど耳になじんだ、旦那さんの声が聞こえてきた。
―――どうだ、そろそろ冷えてきたかい?
「そ、そうでもないですよ…」
―――ふうん…まあ、それが強がりかどうかはすぐわかるけどな。
ブツリと電話が切れる。それとほぼ同時に、あたしはブルっと震えた。
彼の言う通り、あたしの言葉は強がりに過ぎなかった。彼がカウントを開始してからまだ10分も経っていないのに、もう下腹のあたりにおしっこの気配を感じる。
身体はすでに冷え切っていて、寒さがしみ込んでくる。
パンストこそ履いていたけれど、この寒さでは多少マシという程度の意味しかなかった。
仮にタイツを履いていたって寒いくらいなんだから。
スカートの中に容赦なく冷たい空気が入り込んできて、ますます下腹を冷やしていく。
その上、事前に飲まされたものも悪かった。
コーヒーを2、3杯立て続け。それだけでもげっぷが出そうだったけれど、それだけじゃなかった。
さすがに利尿剤みたいな薬品こそ飲まされていなかったけれど、コーヒーだけでも利尿作用はある。
ましてこの寒さのなかではてきめんだった。
それでもあたしは意を決して歩き始めた。
もう、こうなったら何としても耐えきるしかない。
こんな人通りの多いところでお漏らしなんて、考えたくもない。
しかも、この街では数少ない繁華街だ。うちの園からは多少距離があるけれど、うちの園の従業員にせよ保護者たちにせよ買い物やお出かけは大体このあたりだ。
どこで誰の目に留まるか、知れたものじゃない。
できるだけおしっこのことを意識しないようにしながら、あたしは平和な街を歩いた。
でも、その努力には何の意味もなかった。
意識しようがしまいが、物理的に溜まってくるものはどうしようもないし、なにより溜まり方がひどすぎる。
いくら気をそらそうとしても、膀胱の中が自分の排泄物でどんどん満たされて行くのが嫌でもわかった。
15分ほどたつころ、あたしは無意識のうちに、自分でもおかしいんだけれど、頭の中で子供の頃学校でよく使ったビーカーを思い浮かべていた。
理科室に置かれている、水の量を測れる目盛りのついた、ガラス製の容器。
それの水位がどんどん上がってくる様子が、頭の中でやけにはっきりとイメージされた。
ただ、その時ビーカーに溜まっていた液体は、真っ黄色だったのだけれど。
30分を超えるころには、本気で辛くなってきた。
男性のことはしらないけれど、女の身体はことおしっこにかけては、そんなに我慢できるようにはできていない。
一歩を踏み出すごとに、まるでお腹の中でちゃぷっと音がしそうな気さえした。もちろん想像だったけれど、本当にそんな感じだった。
それでもあたしは、まだ諦めきれなかった。
この歳になってお漏らし。それも、あんな夫婦のせいでだ。
なにかあたしが悪いことをしたわけでもないのに。
…それとも…、もしかしてあたしの選択は、なにか根本的なところで間違っていたんだろうか。
時計をすがるように見る。あと2時間半弱。
普段だったら大したことのない時間だったけれど、その時のあたしの気が遠くなるには十分だった。
45分経過。
歯を食いしばり過ぎたせいか、頭がクラクラする。それに、なんだか身体も安定しない。力が入り過ぎているのか。
なんとか…なんとか…
あたしは、天に祈りたい気分だった。
でも、頭の中のビーカーは、もう一番上の目盛りの直下くらいまで黄色い液体で満たされている。
足がおぼつかない。
むしろ、まだ45分しかたっていないのが、信じられなかった。
目の前の、サラリーマンでいっぱいの牛丼屋の店先が、ゆらっと揺れた。
それどころか、街並みもみるみるうちに、ゆらゆらと揺らぎ始める。
涙ぐんでいたのだ。
というか、あたしはもう半ば、泣いていた。
涙が次から次に湧いてきて、目の中に納まりきれなかった分が、頬を伝って流れ落ち始めた。
通りがかりの男性のひとりが、ふっと顔をそらすのが分かった。
漏らす漏らさない以前に、もうあたしの様子は見るに堪えないものになっていたんだろう。
それから5分ほど、あたしはあてどもなく歩き続けたけれど、それは悪あがきに過ぎなかった。
膀胱が限界まで自分のおしっこで膨れ上がっているのが、ハッキリと感じられる。
ここまで持たせただけでも、我ながら大したものだった。
でも、それももうすぐ、全部無駄になる。
それは自分でもわかっていた。もう、一歩を踏み出すのさえ辛い。
足を前に出すたびに、今にも漏れてしまいそうだ。
それに足元自体もおぼつかなかった。血行がどうかなってしまったのか、全体にしびれた感覚が広がり始めている。
いきなりスマホがポケットの中で鳴り響いた。
びくりとした途端、股間に液体が少し漏れたのを感じた。
あっ…!
それでも、あたしはなんとかしずくだけで止めた。
もっとも、しずくだけとはいっても、意外に漏れた量は少なくなかったようだった。
びっしょりとした濡れた感覚が、ショーツはもちろんパンストにもじんわりと感じられる。
足を踏ん張るようにしながら、なんとかスマホを取り出す。
その程度の手の動きさえ、もう億劫だった。
―――あーテステステス…どう、状況は?
「…」
もう、何も言えなかった。
というよりも、もう言うべき言葉が浮かんでこなかった。
怒りさえその時は感じる余裕がなかった。
―――ははっ…いい塩梅みたいだな…
「…」
―――まったく無口だな。じゃあいいよ。クライマックスだ。楽しませてくれよ…
ブツリ。
再び電話が切れる。あたしは、そのまま力なくスマホをその場に取り落とした。
カバーをつけていたから大した音はしなかったけれど、スマホが道路のアスファルトの上に転がる。
頭の中に、ビーカーの淵ギリギリまできた黄色い液体が、ゆっくりと膨らむように、張力の限界に達する様子が浮かんだ。
こんな時にまでそんな想像をしている自分が、馬鹿みたいだった。
…クライマックス、か。
こんなの見て、本当にあの人、何が楽しいんだろう…
諦めを通り越して、空虚な気持ちだった。
腰に込めていた力が、ごく自然に抜けた。
必死にせき止めていたあたしの尿道口が、その緊張を失った。
…しゃーーーーーーーーっ…
これまでの人生でもそうそう見たことがないほどの量のおしっこが、豪雨のように自分のスカートの中から噴き出すのを、あたしは他人事のように真上から見下ろしていた。
厳密には自分では角度的に見えなかったけれど、周りの人から見ればそう見えたはずだ。
それほどの勢いだった。一応ショーツとパンストで遮られているから一直線でこそなかったけれど、量が量だったし、なまじ遮られている分、飛び散り方が余計ひどかった。
もうスカートの裏地までが、びしょ濡れになっている。パンストの内股側は、足元まで完全におしっこまみれになり、靴の中に溜まり始めている。
もちろん、アスファルトの上がどういう状態だったかは言うまでもない。
あたしの少し開いた両足の間には、大きな水たまりができていた。
量と勢いが激し過ぎて、アスファルトが吸収しきれなかったのだ。
我慢に我慢を重ねたせいか、それともアスファルト自体の色のせいか、その水たまりは頭の中で想像していた黄色い液体よりもかなり濁っていて、すこし泡立っていて、汚らしかった。
「うわぁっ」
通行人の誰かが叫んだのが聞こえたけれど、あたしはそちらを見る気力もなかった。
どうよ…満足?あたしの、こんなみじめな姿を見て…
意外なことに、はずかしさはなかった。
恥ずかしさもなにも、あんまり状況がひどすぎて、現実感自体が感じられなかった。
その代わりに全身から、力が抜けた。
立っていられなくなって、あたしはその場にしゃがみこんだ。
しゃがみこむだけのつもりが、勢い余って尻もちをついてしまう。
そこは、今作ったばかりの、自分のおしっこの水たまりの上だった。
びちゃっとお尻のあたりから音がした。
冷たい感触と、そしてかすかなアンモニアの悪臭を感じながら、あたしは呆然としていた。
尻もちをついた自分の両足がばっくりと開いている。
周囲の通行人におしっこまみれのスカートの中が丸見えになっているのは、自分でも自覚はしていた。
ほとんどの人は目をそらしていたけれど、それでも数人ほどの男性が、見てはいけないものを見るかのようにちらちらとスカートの中を見ているのがわかる。
でも、それがわかっていても、あたしは姿勢を直す気にさえなれなかった。
あたしにとって悪夢でしかないお漏らしプレイは、こうして終わった。
かろうじて運がよかったのは、どうやら園児の保護者も従業員たちも、その日はいなかったらしいことだった。
あそこまで豪快にお漏らししたとなると噂にならない方がおかしい。
でも、そんな様子はまったくなかったし、意図的にごまかしていたわけでもなさそうだった。
そして、もう一つあたしにとって運がよかったことがある。
あの後すぐ、あの夫婦は姿を消してしまったのだ。
厳密に言うと、奥さんの暴力沙汰。それも、旦那さんに対してのものだ。
詳しくは知らないけれど、あの奥さんと、あの旦那さんの組み合わせだ。
考えてみたら、それまで何もなかったことのほうが奇跡的だったのかもしれない。
旦那さんは命には別条はなく、奥さんにしても事件にはならなかったらしい。
らしいというのは、この明らかな暴力事件は、少なくとも新聞に載ることはなかったからだ。流れたのは噂だけだった。
もしかしたら彼らの親族が痴話喧嘩とでも言い張って、内々でもみ消したのかもしれない。
ただ、彼らがそのまま子供を育てることができなくなったことだけは確かだった。
うちの園に着ていた彼らの息子は、そのまま親戚に引き取られていった。
わたしがわずかなりとも同情を抱いたのは、当たり前だけれど、その息子さんに対してのみだった。
それ以来、あの家族の姿を、あたしはこの街で一度たりとも見ていない。
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