予備校というところは、社会に出た今考えても、学校としてすごく特殊な場所だと思う。
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高校など、一般の学校に比べると極端なまでの無機質さ。
なんせ、受験一本やりなわけだから、たとえどんなに熱心に通っていたとしても思い出が残りづらい。
要するに情緒にかけるってことです。
そんな予備校だが、意外に色恋沙汰は多い。
延々勉強し続けるストレスのせいかどうかは知らないけれど、思いのほか色っぽい話が発生するのだ。
もっとも、そうした話は予備校だから目立つ話であって、一般的には珍しいものじゃない。むしろ、普通の恋愛沙汰と比べたら地味な話がほとんどだった。
が、ごくまれにメガトン級の爆弾案件が現れることもある。
今日は、私が予備校に通っていたころ遭遇した、爆弾案件の思い出話をひとつ、紹介しようと思う。
GW明け。
「おまえらにGWなぞあるわけねえだろう!!」との悲しい標語(意訳だけれど、本当にこういう内容のことが黒板に書いてあるのだ)を胸に、世間一般では長期連休であるところの1週間を終えた頃合だったと思う。
私の耳に「美幸先生」なる講師の噂が流れてきた。時期が微妙なのは、単にその講師の授業を取ってなかったからなのだが。
友人いわく、
「おい、みたかおまえ美幸先生を!すげえぞ、一見の価値あるから!!・・・ただ、授業をとるのは薦めねえけどな」
噂をささやく奴は皆一様にこのように述べ、そして皆一様に深いため息をつくのだった。
なんだそれ?一見の価値はあるが授業はとらない方がいい?
正直疑問だったが、大体の想像はついた。
予備校教師の中には、ほぼ詐欺のような「秘伝」(インパクトだけはある)や、漫才師のような雑談(それはそれですごいのだが)だけで食っているような人物も少なからずいる。
要は人気商売で、ある意味芸能人に近いとさえいえる職業なのだ。
当の本人たちがそういっていたので、まず間違いあるまい。
なので、多分「美幸先生」もその手の一人に違いない。私は当初、そう解釈していた。
が、それが根本的な誤解であることがわかるのに時間はかからなかった。
別に、本物の名講師だったとかいう話ではない。
それ以前の話だったのだ。
5月終盤。自習時間に、彼女はたまたま監督として現れた。
うちのクラスの監督役の従業員が休んでしまったためだ。
私が通っていた予備校は、一応は自社ビルを持ってはいるものの零細もいいところで、従業員が少ない。
そのため、多少でも休みがでてしまうと、講師がその役目を肩代わりせざるを得なかったのだ。
零細予備校の悲しさという奴なのだが、それはさておき。
美幸先生とやらを一目見て、私は思った。「・・・これは。」
あからさまに「あ、コイツ犬系だな」って感じのかわいらしい彼女は、白いブラウスに、黒と紺の中間くらいのカラーリングのスカート。
それ自体は別におかしな話ではない。むしろ教科書どおりといってもいい、教師っぽいいでたちだ。
だが、問題はその白いブラウスの下だった。
レース。豪快なまでにゴージャスなレース。
それが過剰なくらいに施された下着が、ブラウスから思いっきり透けているのだ。
なにせ、色が紫なのだ。
白いブラウスだとモロだ。
しかも、ブラウスがそもそも薄めなのか、光の当たり具合によってはレースの細かい部分までもわかってしまう。
その上、トドメに彼女は巨乳であった。
かなり小柄な身長とスレンダーな体型に、まったくそぐわない巨乳だ。
それが、レースの下着にいかにも窮屈そうに収められているのが、透け具合からして容易に想像できた。
要するに、やりすぎである。
あまりに漫画的ないでたちは、むしろアンバランスとさえ見えた。
だが、少なくとも、ただでさえ飢えた予備校生男子にとっての破壊力は抜群だった。
巨乳と、小柄さと、かわいらしい童顔と、そして透けまくりのいでたちとを取り揃えた彼女の色気は凄まじいものだった。
教壇にたち、彼女ははじめて入ったクラスに緊張しているのか、やたら深く一礼した。
新米さんなのかもしれない。
「こ、こんにちわぁっ」
長い髪が揺れる。その拍子にシャツのボタンとボタンの間の布地がたわんだ。
彼女の斜め前方にいた私は、紫に光る、多分シルクかそっち系の素材の、全面にレース細工が施された下着を直接目の当たりにすることとなった。
結局、その後私は美幸先生の授業を受講することにした。
あのシャツから透ける色鮮やかな下着。思春期は終わったとはいえ、まだ二十歳前の私にはインパクト強すぎたのだ。
で、実際に受講してみて思ったのは、「受けない方がいいぞってのはこういうことか」。
予備校講師は芸能人的な仕事だと書いたけれど、言い換えれば、予備校生をノセる話術か、しっかりした指導力かのいずれかが結局必要になるということだ。
だが、彼女にはどちらもなかった。
むしろ、「・・・よくこれで採ったな、この予備校・・・」というレベル。
零細である我が校と、そこで学ぶ我々自身の将来を不安にするには十分すぎるほどだった。
とにかく普通の解説でもつっかえる。
あがり症なのか、すぐしどろもどろになってしまうのだ。
「えーっと・・・あ、これは・・・えと、えと、あ、ごめん、説明しなおします!」
それだけならいいのだが、教え方自体もそれほどうまくないため、聴いているこちらもどんどんわけがわからなくなる。
そんな調子なので、見切りをつける受講生も続出した。
特に女の子たちは、あっという間に去ってしまった。
出席者が、彼女のルックスにヤラれた男ばっかになるのに、それほど時間はかからなかったのである。
その男どもにしたところで、授業を聞いてはいなかった。
聞いたら混乱するばかりだからだ。
むしろ、我々はその時間を、シャツからの透け具合を楽しみ、心を癒す至福の時間と割り切っていた。
授業が終わると、こっそりと、受講生同士で、「本日の透け具合」を議論するのが我々のトレンドとなった。
「おい、今日は凄かったな」
「真っ赤だぜ。総レースで」
「胸の辺り生地薄そうだったぞ、あれ、乳首透けるだろ」
「アレ絶対ガーターもつけてるよな、ていうかそうであって欲しい」
「・・・それは妄想だから」
わかっているのかいないのか、彼女の下着もトレンドの広まりと歩調をあわせるように、みるみる派手になっていった。
いや、もともと派手だったんだが、さらに、なおさら。
一方で、授業後、彼女に質問をしに行く奴というのも現れた。
教え方が下手な講師に質問をわざわざしに行っても効力は薄いと思うのだが、彼らの狙いは、本来の目的である受験とは全く別のところにあった。
教え下手ではあったけれど、彼女は彼女なりに一生懸命なのだ。
尋ねられてもうまくこたえられない。ならば、ということで彼女は言う。
「ごめん!!明日までには答えるから1日待って!」
これが堪えられないらしい。
いかにも「ごめん!」って顔がたまらなくそそる上に、その際のアクションがまた「申し訳ない!」って感じでオーバーアクションなため、胸が揺れまくるらしい。
で、トドメに上目遣いで「1日待って!」である。
3段オチっていうんだろうか。
ついでにいうと、焦りのあまり汗ばんでくるのか、質問すればするほど、どんどんブラウスの透け具合が強烈になっていくのもチェックポイントだそうな。
そんな調子で、彼女は一部の層限定ではあったけれど、確固たる支持基盤を築いていった。
そうこうするうちに、本気で彼女の魅力にやられてしまう奴というのも現れた。いわゆる「ホレちゃったよ・・・」って奴である。
当時は萌えという単語はまだメジャーではなかったけれど、今でいうなら、萌えてるうちに本気になっちゃった、ということになるんだろうか。
確かに、実力はさておき、一生懸命に教えようとする姿は健気で、変にクールな講師よりも人間的な魅力は上だったのだ。
彼女がいるにも関わらずその状態に陥り、あわや修羅場になりかけた奴さえいた。
美幸先生に怒鳴り込もうとする彼女を必死で止める我々の苦悩はいかばかりだったか。
やっぱあれだ、萌えは萌えレベルでやめとくのが一番楽しいよな。
こうして、美幸先生は本人のあずかり知らぬところで、いつのまにやら人気講師とはいわないものの、話題の講師にはなっていたのである。
そんなある日。時期的には、夏の終わりに差し掛かったころだっただろうか。
美幸先生はいつもどおり教室に入ってきた。
少し光沢のある白いブラウス。薄手のシルクか何かだろうか。
いつもどおり透けている下着は、珍しく純白の総レース。透け具合は無論派手な色のものには劣るけれど、その微妙な透け加減はたまらなく我々の股間を刺激した。
「あ、じゃあ・・・みなさん、授業はじめます。こないだの、わかんないところとか・・・ないよね」
数ヶ月たってもかわらない、いつもどおりのたどたどしい挨拶。
でもなにか、雰囲気が違った。なんか元気ないな、くらいの違いではあったけれど。
我々は何となく違和感を感じつつも、いつもどおり、ブラウスの下でサラサラと素肌の上でおどっているであろう布地の輝きを夢想しつつ、その日の授業を終えた。
ただ、この日を境に、美幸先生の様子は明らかにそれまでとは違ったものになっていった。
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